京都府高の見解・声明
「10年経験者研修」に対する私たちの見解と要求
2003年4月26日
京都府立高等学校教職員組合執行委員会
京都府教育委員会は、4月1日付で「京都府10年経験者研修実施要項」(以下「要項」)を通知しました。これは昨年6月に行われた教育公務員特例法(「教特法」)の一部改定と、文部科学省が8月に示した「通知」を受けて定めたものです。法によって義務づけられた研修ですが、以下のように重大な問題を含んでいます。
私たちは、教職員の教育的力量を高めるためうえで、研修はきわめて重要だと考えています。有意義な研修を行うためには、教職員の自主性と教育研究の自由が大切にされなければならず、そのための条件整備が不可欠です。また教職員にとって、同僚教職員との教育研究や児童生徒とのふれあいこそが最も重要な研修であり、それを保障する手だてが必要とされています。
こうした立場から、「10年経験者研修」(以下「研修」)に対する私たちの見解と要求を表明します。
1.校長・教育委員会による一方的な「教員評価」にもとづく「研修」であり、本来の研修から逸脱した、「勤評・成績主義」につながるものです。
(1)この「研修」の最大の特徴は、これまでの経年研修と異なり、いわゆる「教員評価」にもとづいて実施される点です。「要項」では、校長が研修対象者の「評価票」(案)と「研修計画書」(案)を作成し、教育委員会がこれを決定するとしています。そして「教員評価」 にもとづいて、「差」をつけた研修コースを受講するようになっています。
(2)あくまで「評価に対しての権限と責任は教育委員会」にあるとし、自己評価や本人の意見が反映されるシステムはありません。教育委員会が本当に個々の教員の評価を行えるのか、大いに疑問です。また「評価票」の項目を見ると、教育委員会による教育内容への介入につながりかねません。教育行政の任務は「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」 (教育基本法第10条)にあります。こうした教育行政の役割を逸脱し、「国民全体に直接に責任を負って」(同)いる教職員を教育行政に従属させるものです。
(3)教育委員会の担当者は、現時点ではこの「評価」を賃金その他の処遇に反映させること は考えていないと回答しています。しかし、この「研修」自体が「教員評価」を目的とするものであり、「勤評・成績主義」導入を図るために「指導『不適切教員』の免転職制度」や 「優秀教職員表彰制度」などが強引にすすめられていることを考えると、まったく保障の限りではありません。
(4)校長による「評価」にも重大な問題があります。「評価は、具体的な事実に基づいて、正確かつ公正に行う」とありますが、「評価票」の項目や評価事項は極めて抽象的です。対象者から「自己評価や意見」を聴くこともありますが、それが「評価票」に反映されるシス テムや「評価票」の本人への開示義務はなく、すべて「校長の裁量」となっています。校長の恣意的な「評価」を許す余地があり、情報公開や説明責任から立ち遅れた制度です。
(5)教科担当制をとり、教科の専門性が発揮されなければならない中学校・高校では、教科のちがう校長がどう「評価」するのかという問題があります。これを補うために、教務主任や教科主任等の協力を得るとしていますが、これこそ同僚である教職員を「評価する」側に置こうとする重大な問題です。
2.教職員を「研修漬け」にして、いっそうの多忙化に追い込み、教職員の分断と教職員集団の教育力低下を招くものです。
(1)この「研修」は、校内15日・校外15日にわたって行われます。文部科学省の「通知」ではそれぞれ「20日間程度」としており、それから比べると日数は抑えたものの、長期休業中は高校で10〜13日、盲・聾・養護学校で9〜12日費やすことになります。校内の研修はすべて課業日に行うことになり、まさしく「研修漬け」の状態に追い込むものです。
(2)このような「研修漬け」が、研修の基本である教職員の自主性と教育研究の自由を抑圧することは明らかです。教職員にとって、職場の同僚教職員との教育研究や、児童生徒とのふれあいや活動こそが最も重要な研修です。こうした生きた研修を阻害し、学校現場と子どもたちから切り離された「研修」が効果が薄いものであるかは、この間の経年研修を見れば明らかです。
(3)今学校現場では、教育条件を改善しないまま実施された学校完全5日制のもとで、長時間労働と「サービス残業」が横行しています。それでも多くの教職員は「いい教育がしたい」と歯を食いしばっています。「研修」が、教職員をいっそうの多忙化に追い込み、教職員の意欲を奪うことにつながりかねません。法に定められた研修とはいえ、可能な限り日常の教育活動を生かした、負担を軽減する方策を考えるべきです。
3.教職員のリーダーとしての校長の役割を弱め、「評価」「研修」を通して教職員の管理・統制を強めるものです。
(1)本来校長は教職員のリーダーであり、民主的な学校づくりと教職員集団の教育的力量を高めていくうえで重要な役割を担っています。しかしこの制度は、「評価」「研修」を通して、終始校長の「指導」が貫徹されています。教職員はたえず「校長がどう評価するのか」に脅かされ、校長から「どんな指導がされるのか」によって日々の教育活動を制約されることになります。これで民主的な教職員集団が形成されるでしょうか。教職員の教育的力量を集団的に高めていくことができるでしょうか。
(2)10年目を迎える教職員は、文字通り学校の中心的な役割を担う年齢です。生徒とのふれあいや他の教職員との共同の営みを積み重ねて、いっそうの成長を図っていくべきです。校長の「目」を気にしながら、「研修漬け」の毎日を送ることがプラスにならないことは明らかです。
(3)研修の基本は教職員の自主性であり、学問研究の自由が保障されなければなりません。この「研修」は、明らかにそれを抑圧するものです。
4.私たちは、研修を真に有意義なものにするために、次の点を要求します。
(1)文科省が示している「評価項目等の参考例」は、あくまで「参考例」として示しているものであり、具体的な縛りのあるものではありません。差別的な「教員評価」につながらないよう要求するとともに、校長や教育委員会が研修コースを押しつけるのではなく、多彩な 研修メニューを用意し、教職員の希望による研修にするよう要求します。
(2)校長の一方的・恣意的な「評価」を許さないよう、対象者の自己評価や意見を最大限取り入れ、「評価票」の対象者への開示と意見表明の保障などのシステムを確立すべきです。
(3)研修終了後の評価を勤務評定に連動させないよう強く要求します。実施要項では研修終了後の措置については、「研修報告書を提出する」とだけ規定しており、その後の措置を明らかにしていません。あいまいな部分を残さないようにすべきです。
(4)教職員は、長期休業中といえどもさまざまな仕事に追われ、「普段できない研修をじっくりしたい」ということすら実現できません。課業日はなおさらです。「研修」が本来力を注ぐべき教育活動にしわ寄せがあっては本末転倒です。「研修」の負担を少しでも軽減するよう要求します。
①研修日数の短縮と弾力化を図ること。
②教育センター以外の研修も認めるなど、研修機会の弾力化を図ること。
③校内研修では、各種研修会や教科での研修なども「研修」として認めるなど、弾力的な運用を図ること。
(5)自主研修の機会と条件の保障をすすめるべきです。「通知」では、「教員自らが行う自主研修も大事であることから、各任命権者においては、自主研修について、場の提供や情報 の提供等、奨励や支援に努めること」としており、自主研修を拒否できないようになってきています。そうした機会の保障と条件整備に力を注ぐべきです。
(6)研修における「自主・民主・公開」の原則をあらためて確認すべきです。文科省「通知」でも、計画の策定や評価にあたっては「教員のニーズや学校現場の意見を反映させることが望ましい」としており、「研修」の押しつけによる教職員管理の強化につながらないようにすべきです。
(7)この問題について、私たち府立高教組との協議・交渉を持つよう要求します。前述のように、教職員の身分や勤務条件にかかわる重大な問題が含まれています。また知事が表明したように、政策決定過程への参画を促進する立場から考えても、教職員組合との協議は不可欠です。
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