京都府高の見解・声明

2006年11月13日

京都府教育委員会
委員長 藤田 晢也 様
教育長 田原 博明 様

京都府立高等学校教職員組合
執行委員長 寺内 寿

「高等学校必修科目未履修問題」「いじめ問題への指導に関する自己点検シート」「進学塾問題」等、緊急の課題に関する申し入れ

 高等学校での必修科目未履修問題、いじめ自殺問題など、この間連続して起こっている一連の問題は、公教育への信頼を大きく揺るがすものとなっています。子どもたちの中には、「談合」「やらせ」「隠蔽」「偽装」といった大人と社会への信頼を損なう出来事に、大きな不安が渦巻いていると考えられます。こうした問題の背景は何か、なぜ起こったのか、真剣な検討ととりくみをすすめる必要があります。。そのためには、私たちは、何よりも行政が情報の公開に努め、とりわけ学校現場との意思疎通と、学校現場の自主的な取り組みを励まし支援する姿勢をとることが肝要だと考えます。

 以上の観点から、標記の緊急の課題について、以下の点を申し入れます。当局の誠実な対応を要求するものです。


〔1〕「高等学校必修科目未履修問題」について

  1.  必修科目未履修問題について、すべての府立高校の調査結果を詳細に明らかにしてください。
  2.  10月28日付「京都新聞」で、「表向きの時間割と実際の授業の内容が異なっていた」として報じられている府立南陽高校の事例について、その詳細を明らかにされたい。同様の事例は府立高校でも存在すると考えられますが、その点についての貴委員会の考えを明らかにしてください。
  3.  「総合的な学習の時間」についても、「その趣旨に反する事例がかなり見られる」といった指摘があります。その実態を明らかにし、貴委員会の姿勢を明らかにしてください。
  4.  私たちは、今回の事態の問題点として2点あると考えます。第1は、進学実績至上主義が背景にあり、有名大学への進学競争が高校教育を歪めていること、そして数値目標によって「進学実績」をあげることを迫る教育行政の責任が極めて大きいと考えます。第2に、学校現場や各方面から問題が指摘されている現行の学習指導要領について、その声に耳を傾けることなく、「法的拘束性」をかざす文部科学省の施策が完全に行きづまっていることです。私たちは、「高校で何を学ばせるのか」「高校でどんな力をつけるのか」という点について、学校現場の自主的・集団的な議論と研究をしっかり保障することが重要だと考えます。そのことについての貴委員会の基本的な考えと姿勢を明らかにしてください。

〔2〕「いじめ問題への指導に関する自己点検シート」について

 私たちは、子どもたちの豊かな成長を育み「人格の完成」をはかる教育の場で、「いじめ」は絶対あってはならないし、学校や教職員が「いじめ」に加担したり助長したりすることは言語道断だと考えます。「いじめ」が原因で未来ある子どもたちが自ら命を絶ったことは、同じ教育に携わる者として痛恨の極みです。こうしたことがなくなるよう、私たちも全力で取り組むことを明らかにした上で、以下の点について申し入れます。

  1.  貴委員会が示している「自己点検シート」は、どのように活用されるのか。「自己点検」の名を借りた学校現場への管理・統制の強化は、かえって「いじめ」を隠蔽させ、解決を困難にすることは、この間の経過を見れば明らかです。学校現場の自主的な取り組みを支援する基本姿勢を明らかにしてください。
  2.  「シート」の冒頭の点検項目にあげられている「いじめの基準」については、各方面から「文科省の基準では実態が明らかにならない」という指摘があります。また、「いじめゼロをめざす」といった数値目標の押しつけが強まる中で、「ゼロ以外の報告を認めない」といった驚くべき事態が明らかになっています。「いじめ」の実態と行政の認識に大きな乖離があるのが現実です。こうしたことが起こらないよう、学校現場の取り組みを支援する基本姿勢を明らかにしてください。
  3.  学校から「いじめ」をなくしていくためには、何よりも教職員が子どもたちに向き合い、豊かな人間関係をつくっていけるように、少人数学級やゆとりある教育活動など、教育条件整備に全力を尽くしてください。
  4.  「いじめ」問題の解決には、教職員の情報交換や職員会議等での教育的論議が尊重されなければなりません。そして、子どもたちの意見表明の機会の保障、父母との連携が重要であることは言うまでもありません。「いじめ」問題には教職員が情報を共有し、一致して解決にあたるという国会答弁を受けて、自主的な学校運営を保障する基本的姿勢を明らかにしてください。

〔3〕いわゆる「進学塾」問題について

 本年8月に、府下の10の進学塾で構成する「京都府公立難関校研究部会」という団体が、9月22日に山城高校を会場に、「専門学科説明会」を開催する旨のチラシを市内地域を中心に新聞折り込みで配布するということがありました。私たちは、一部の進学塾に便宜を図り、府民にも疑念を抱かせることにもつながるとして、公立学校としてあるまじきことと考えています。このことについて、すでに9月13日付の「公開質問状」でも、貴委員会の見解を質問しているところですが、今もってしかるべき説明・回答がありません。その点を踏まえて、以下の点を申し入れます。

  1.  山城高校の校長は、当該分会の申し入れに対して「教育委員会の了解を得ている」と回答し、「全く問題はない」「これからも同様の申し入れがあれば喜んで受ける」という姿勢を表明しています。「教育委員会の了解云々」とういうのが事実であれば、由々しき問題です。9月府議会の場で、貴委員会は今回の事態は「不適切である」と答弁されていると聞き及びますが、府立学校で起こっている問題であり、多くの府民の目に触れていることでもあるため、当局の説明責任が問われるところです。事実経過の説明と貴委員会の姿勢を明らかにしてください。
  2.  山城高校の事象について、校長の責任を明らかにしてください。学校現場の話によると、校長は新聞折り込みが行われた時期より前に職員会議の場で説明会のチラシを教職員に配布し、周知を図っています。また、教職員の質問に対して「学校との共催である」と回答しています。これは塾が勝手にやったといえるものではなく、校長も積極的に推進したと見ざるを得ません。公立学校の施設を使って、府民に疑念を抱かせるような「説明会」を開催(共催)することは、公教育の信頼にかかわることでもあり、学校の責任者としての資質が問われる問題と考えます。貴委員会の見解を明らかにしてください。
  3.  現在、府立高校では、校長など責任ある立場の教職員が特定の進学塾に出かけて行き、「進学説明会」に応じるといったことが公然と行われています。私たちは、子どもたちの疑問や不安に積極的に応えることは大切なことだと考えますが、山城高校などの事例を見ると、「一部の塾への便宜供与ではないか」「公平・公正な入試は大丈夫か」「子どもたちの成績など個人情報は大丈夫か」など、入試の公平性への疑念や高校教育のあり方にかかわる問題となっています。従って、軽々に進学塾との提携や説明会参加は行うべきではないと考えます。
     このことについて、府立高校での実態調査を行い、それを公開した上で、貴委員会の基本的な姿勢を明らかにしてください。